イニシエーション・ラブ
メカゴリラ評価
読みやすさ: | (2.0 / 5) |
おもしろさ: | (4.0 / 5) |
感動: | (5.0 / 5) |
著者 & 出版社
著者
乾 くるみ 先生
出版社
株式会社文藝春秋
発行年月日
2004年4月1日
2015年5月23日公開で映画化もされている名作です。
ちなみに映画版では監督が堤幸彦さん。松田翔太さん、前田敦子さんが出演されています。
私は映画の方はまだ見ておりませんが、U-NEXTで無料で見ることが出来ます。
興味のある方はリンクを貼っておくのでどうぞ!
この本の魅力
魅力
❶大どんでん返しあり!
❷恋愛小説?ミステリー?叙述トリックのすごさ!
❸映像化されるほどストーリーに魅力あり!
どんでん返しはとてもおもしろいですよね。
この小説の魅力は、これに尽きると思います!
内容
基本的なストーリーは恋愛小説ですが、その内容やどんでん返しから、一部ではミステリー小説だとも言われております。
カバーには【最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する】との注意書きが記されており、【読み終わった後は必ずもう一度読み返したくなる】と銘打たれた作品です。
本編は2部構成となっております。
side-Aとside-Bに分かれていますが、大まかなストーリーをご紹介致します。
まだ読んでいない方・内容を知りたくない方は飛ばしてください。
Side-A
主人公の鈴木は、友人から代役で呼ばれた合コンで出会ったマユに心を惹かれていく。
その後同じメンバーで誘われた海水浴でマユと再会できた鈴木は、ふとしたきっかけでマユから連絡先の電話番号を教えてもらう。
2週間後、意を決して電話をかけたところ、マユも自分のことを気にかけてくれていたようで、デートの約束をなんとか取り付ける。
毎週のデートを重ねるうちに「マユちゃん」「たっくん」と呼び合うようになった二人。
その後鈴木とマユは互いの家を行き来するようになり愛を深め合う。
11月のある日、ドライブ先で入ったホテルでの会話で、マユからクリスマスイブの予定を尋ねられる。夜景の見えるレストランで食事をした後お泊り、という理想的なプランを話し合い、鈴木はダメ元で予約の電話をホテルへ入れてみたところ、たまたまキャンセルがあったとのことで聖夜デートが実現する。
そしてイブの夜、二人は食事の後ダブルルームでプレゼント交換をし、愛を確かめ合う。
鈴木はこれ以上ない幸福感を味わったのだった。
Side-B
マユとの関係を優先し、東京の会社からもらった内定を蹴り地元静岡の企業に就職した鈴木に、東京の親会社へ2年間の派遣の話が持ち上がり鈴木は断り切れなかった。
マユとの愛を支えに離れ離れの生活を続けていた鈴木は、経済的負担に加え肉体的精神的負担も重なり、徐々に疲弊していく。
そんな中、東京での同僚で見た目も中身も完璧な女性である石丸美弥子と仕事を通じて意気投合する。
一方で、3週間ぶりに会ったマユから「生理が来ない」という事実を告げられ、鈴木は動揺する。
翌週末、マユは産婦人科の検査を受け、妊娠3か月であると診断される。鈴木は堕胎を決意し、さらに翌週堕胎手術を受けさせる。
この沈んだ気持ちを紛らわせるべく仕事に没頭する鈴木だったが、大きな仕事を上げたその日に美弥子から飲みに誘われる。
酒の席で彼女がいることを美弥子に看破され、さらに「変わるということは悪いことではない」「考えを変えないことは成長を止めることだ」と諭される。
美弥子は元彼から別れのときに言われた「お前にとって俺はイニシエーション(通過儀礼)だった」という言葉を引用し、鈴木とマユの関係が「イニシエーション・ラブ」であれば自分にもまだ望みがある、と告げる。
その翌週、鈴木は美弥子からショッピングに誘われるが、ショッピングを終えた後、半ば強引な形でホテルへ誘われ、美弥子と関係を持ってしまう。
マユと会うのを隔週にしたのをよいことに、また美弥子からも「遊びでいいから」とも言われた鈴木は二股状態をしばらく続けているうちに、マユと美弥子との関係は逆転しつつあった。
そしてある日、マユに対して「美弥子」と呼んでしまうという大失態を犯し、咎めるマユに対して逆ギレした鈴木はとうとう別れを告げて部屋を後にする。
美弥子との仲が社内で噂されるようになり、またマユとのために確保しておいたクリスマスディナーをキャンセルした鈴木は、美弥子にクリスマスの予定を尋ねる。
すると美弥子は自分の家へ招待したいと言う。クリスマスの日、鈴木は両親に紹介され、居心地の悪さを感じながら食事を済ませて美弥子の部屋へあがりこむ。両親が階下にいるところで美弥子といちゃつくという背徳感を覚えつつ別れたマユへの想いを馳せるところで、物語は衝撃の結末を迎える。
ネタバレ
【最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する】
の内容も含めてネタバレを記載します。
この後読む予定のある方は、読まないでください!!
まずは、絶対に先に読まないで!と記されていた、最後から2行目を記します。
「……何考えているの、辰也?」
イニシエーション・ラブより
これだけの文では、内容を読んでいない方には意味が分からないと思います。
実はSide-Aの主人公である鈴木と、Side-Bの主人公の鈴木は全くの別人だったのです。
Side-Aの主人公は鈴木夕樹(たっくん)
Side-Bの主人公は鈴木辰也(たっくん)
同じ苗字と、愛称である「たっくん」が重複していることにより、読者は同一人物であると勘違いしてしまいます。
これが叙述トリックというやつですね。
読者の先入観を利用してミスリードを行うという小説のテクニックです。
登場人物が主人公の環境が違う事により、Side-AとSide-Bで違っていること。
またヒロインであるマユが同じであるという事から、読者は完全に騙されてしまうと思います。
そういう私も、Side-Aであんなに純粋だった「たっくん」がSide-Bではとても乱暴で暴力的な面が見え隠れする。
人はこんなにも変わってしまうのかと、悲しい気持ちにもなって読んでいました。
しかし、そこに少しの違和感を感じながらも読んでおりました。
また、クリスマスデートがキャンセルされることのデジャブ、AとBで時間軸がずれているという違和感も後半になると読者は感じることができます。
この違和感で何かがおかしいと気づく方も多いのではないでしょうか。
と、これだけだと、叙述トリックがすごいという小説だけで終わると思います。
しかしながら、ミステリーであると言われている要因はもう一つあります。
Side-AとSide-Bのマユは同一人物である!
ということです。
Side-AとSide-Bの時間軸は重なっている部分が多くあります。
そしてヒロインのマユがAとBのどちらでも重なる行動をとっている為、同一人物であることは間違いありません。
つまり、
マユは二股をしているのです!
先に付き合っていたBのたっくんの子をお腹に宿しているときもBのたっくんとデートをしております。
奇しくもクリスマスには、BのたっくんがキャンセルしたホテルディナーでAのたっくんとホテルディナーを楽しむ…。
そしてAの主人公にも同様の愛称であるという「たっくん」をつけるマユ…。
私は読み終わった後に、叙述トリックにびっくりし、騙されたという驚愕の感情が生まれた後に、マユはどんな女なんだ…とても恐ろしい…という感情に襲われました。
これが、この小説がミステリーであると言われている大きな所以だと思います。
レビュー
完全に私の主観での評価・批評です。
気分を害される方がいたら、ゴリラの戯言だと思いご勘弁ください。
本書を読んだ時点での私の評価になる為、時が経った後で評価は変わると思います。
あくまでも、読んだ時点での私の知識量に基づいた評価になります。
メカゴリラ評価の軸
・読みやすさ → 文章の構成や章立てにて評価、書籍の種類によっては画像や図も参考に
・おもしろさ → 単純な内容の評価、喜怒哀楽すべての感情含めて
・感動 → この作品から何かを得られたか、様々な観点から
読みやすさ
読みやすさ: (2 / 5)
恋愛パートはだれる
恋愛小説として読み始めたのではなく、叙述トリックの名作・ミステリーとしてという前情報を知っていた状態で読み始めたのも原因かもしれません。
Side-Aの純愛物語にほっこりする場面もあったり、Side-Bの大人の男女関係に仕事が絡んでくるというリアルなストーリー展開に、過去の自分を重ねたりと楽しめる場面もあったのは事実ですが、正直ダレて読んでおりました。
また個人的に、後半のたっくんが乱暴になる場面は、とても共感できなく読むのが少し辛かったです。
叙述トリックとして、また時間軸を重ねるためには、重要な部分とそうでない部分が必要でストーリーを長く記すことは必要なのだと思いますが、恋愛小説としては楽しめませんでした。
個人的に恋愛小説が苦手なだけかもですが。
おもしろさ
おもしろさ: (4 / 5)
評判に偽りなし
叙述トリックがあるという前情報を持って読みだしたにも関わらず、違和感と、もしかしたら…ぐらいまでしかトリックの種にはたどり着けませんでした。
またトリックを理解したうえで発生する更なるミステリーにはとても驚きと戸惑いの感情が生まれました。
恋愛小説自体があまり好きではありませんが、トータルではおもしろく読めました。
感動
感動: (5 / 5)
複雑な感情
どんでん返しのオチもそうですが、それに伴うミステリー部分の感情で読破後は戸惑いが大きくありました。
「えっ?!」
それなら、あのときは…というもう一度読み返したくなるという気持ちもとても感じました。
ただ、私は戸惑いと恐怖の感情の方が強く、読み返すのも怖くしておりません。
総評 おわりに
ネタバレまで書いといてなんですが、個人的にはオチを知らずに読んでもらいたいです。
できれば、原作である小説の方が叙述トリックも含め心理描写等、より詳細に楽しめるのではないかと思います。
時間が無い方や、オチだけでも実際に楽しみたい方は映画版をぜひ見てみてはいかがでしょうか。
おすすめです!
コメント